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2015.10.27 (Tue)

【全力!ラノベレビュー】東京侵域:クローズドエデン 02【其の九】

「顔――自分――私―……」

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「俺は、ゆー姉ぇを必ず取り戻す。
 だからお前もいつか、本当の自分を……」


【注意事項】 
(1)ネタバレありです。同作者の他作品にも言及する場合があります。
(2)登場人物データは琳珂の主観で分類・掲載します。
(3)評価は琳珂の独断と偏見と読書歴に基づいて、思うがままに書きます。
 コメントを下さった場合は一応反応しますが、議論をするつもりはございません。
 予めご了承ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつものように表紙の模写です。金髪ロングは楽しいですね!(
綺麗な色の髪留めもGOOD。
衣装だけはちょっとアレンジしちゃいました^^;
おゆるしをー。。

今回も、独断と偏見と上から目線に満ちた長い一人語りになりました。笑

では追記から【東京侵域:クローズドエデン 02】のレビューを始めます。

【More・・・】


書籍データ   ―希望と絶望が交差するステルス・バトルアクション

 【著】岩井恭平    【イラスト】しらび
 【出版社】角川書店  【初版発行日】2015年9月1日  【ページ数】362p

登場人物
 【主役】秋月蓮次、弓家叶方
 【準主役】秋月翔一、ヒマワリ
 【脇役】大郷真愛、秋月旭、魚瀬鞠緒、木村処女神

評価   総合:★★★☆☆ ……求めているものは満たされない。

 【ストーリー】★★★☆☆  【戦闘描写】★★★★☆  【人物描写】★★☆☆☆
 【泣ける度】 ★☆☆☆☆  【和む度】 ★★☆☆☆  【恋してる度】★★★☆☆
 【イラスト】 ★★★☆☆

レビュー

「“ムシウタ”の岩井恭平最新作」。
帯にこのあおり文があったから私は今作を買いました。
これが他の作家の作品であったなら、きっと買っていません。
01を読んで「続きはどうなるんだろうね」と思っても、
「まぁお金出して買うほどのシリーズじゃないな」と結論をだしていたでしょう。
私はムシウタファンだから。それゆえに岩井先生のファンだから。
「彼の本が読めるなら、内容が面白くてもつまらなくても構わない」という気持ちで、ほぼ無条件に本を買ったのです。
――しかし。
今作を読んで「岩井先生の本が読めて楽しかった!」と満足したかと訊かれれば、
答えは「NO」です。

子どもの頃、大好きな漫画家さんがいました。
その独特な筆致から生み出される白黒の漫画本文はもちろん、カラーページの美しさに惚れこんでいました。
時にはコピックで。時には水彩絵具で。
様々な画材を自在に操る彼女のカラーイラストは味わい深く、壮麗で、何時間眺めていても飽きませんでした。
しかし時代は変わってゆきました。
私が年をとるのに合わせてパソコンはどんどん普及して、漫画界もイラスト界もデジタル塗りが主流になっていきました。
そうしてある日、遂に彼女もデジタル作画に移行しました。
その最初のカラーページを見て……私はがっかりしました。
線画は今まで通りでした。彼女らしい色遣いも変わっていませんでした。
きっとデジタル塗りについてしっかり勉強し、練習し、研究してから制作に臨んだのでしょう。イラストとしての完成度も高かったです。
だけど、何かが決定的に違いました。
「コレジャナイ」と思いました。

……生まれた頃からデジタル塗りだけに囲まれてる、最近の若い子には分かりづらいたとえでごめんなさい。
ただ私は今作を読んで、あの時と同じことを思ったのです。
「うーん。なんか、コレジャナイんだよな」って。

デビュー時に比べて、岩井先生はとても成長されたと思います。
ふわっふわしていた無駄な表現をすっぱり削ぎ落とし、的確に情景を伝える文章を書かれるようになりました。また、シリーズ全体を構想した上で、一冊ずつ堅実にまとめるストーリー作りをされておられます。
文章力、構想力、何もかもレベルが高くなっています。
しかしその結果として「岩井先生らしさ」が薄くなってしまわれたと感じます。

今作は面白かったです。ちゃんと内容が詰まってました。
好きな部分も嫌いな部分もありましたが、サイハテみたいな理不尽さや悪趣味さはないし、適度にどきどきわくわくして楽しかったです。
そのくらいの、どこにでもありそうな良作のラノベでした。
もし誰かが私に作家名を教えないまま今作を貸してくれて「これが今年のスニーカー大賞の受賞作だよ」とか「作家志望の青年がインターネット上に投稿して好評を博した作品を文庫化したんだよ」とか言ったとして、私は「そうなんだー。この作家さんは岩井先生のファンだったのかもねー」というくらいで納得したでしょう。
「いやいやそんなバレバレの嘘つかないでよ。この文体、お話作りは間違いなく岩井先生だよ! 琳珂が何年ファンやってると思ってるの?! バカにしないでよねッ」……と答える自信はありません。

なんかこう、ラノベの基本に忠実すぎるんですよね。文体も物語の展開も。
学校指定の制服を折り目正しく完璧に着て、無遅刻無欠席でテストの成績は全科目平均点以上の優等生みたい。
真っ黒な髪もビシーッとセットしてあって、すっごいイケメンなんだけど、常に醒めた目で周りを観察してそう。
はじめっからこうだったなら、それはそれなんだけど。
そうじゃなかった岩井先生を知ってるから余計に違和感があります。
私が出逢った頃――惚れこんだ頃の岩井先生は、よれよれのシャツをだらーっと着てるイメージでした。
周りの風景を楽しみながらのんびり歩きすぎてしばしば遅刻して、天気がよければ授業をサボって屋上でひなたぼっこして、好きな科目ではクラストップだけど、嫌いな科目は学年最下位で。
柔らかそうな髪には必ずどこかに寝癖がついてて、顔立ちは悪くないけどいつも自分の世界にはいっててぼーっとしてどこ見てるのか分からなくて、でもたまに見せる笑顔がとっっても可愛いの。。
伝わるかなぁ? ^^;
一般的には前者の方がモテるのかもしれないし、大人としては正しいかもしれませんね。
だがしかし私が思う理想の大人って夢水清志郎とかなので(ry

正直に言えば、この感覚は今作に限ったことではありません。
前作もサイハテシリーズもムシウタ12巻以降も、突き詰めれば『2012年以降にスニーカー文庫から刊行された岩井先生の作品全て』にいえることです。
ムシウタ最終巻では、それが良い方向に作用していました。
全体の筋書や個々のエピソード、たとえばクライマックスでの鯱人vs戌子やエピローグの大助×詩歌は「ラノベならこうくるだろう」「ファンとしてこうなってほしい」という期待そのままの展開のオンパレードで、王道にハッピーエンドにまとめてくれたという意味で最高でした。
しかし一方で、クライマックスでの大助×戌子の「そんなに嬉しいか、ワンコ?」のくだりなど数か所以外では岩井節を感じられず、ちょっと残念な気持ちもありました。

今作において、私は明確な岩井節を一つも感じられませんでした。
代わりに明らかだったのは『既視感』です。
人物の設定や台詞、表現の端々で「あ、これムシウタで見たな」と感じました。
たとえば↑の名言は、00での大助→詩歌の「俺は絶対に諦めない。約束だ。だから、お前もいつか……。お前もいつか、自分の夢を思い出せよ」(p.115)と酷似しています。
そもそも、前作でも指摘しましたが、蓮次と大助のキャラ設定(実はヤバいことやってる高校生男子。家庭事情複雑。一途だけど辛く哀しい恋愛をすることになり、なんとかシアワセになるべくがんばる)がほぼ同じなんですよね。
また蓮次が「ゆー姉ぇ」と想い人の名前を繰り返す姿は、03で初季が「“先生ぇ”…」と呟きまくっていた姿と重なります。
今作がもっと未来に出版されていたなら、ムシウタ完結から10年後くらいに出された作品だったなら、この既視感も懐かしく楽しめたのだろうとは思いますが。

なんていうんだろうなぁ。
本来なら、作家の文体や着想、物語の作り方から「おーこれは、あの『ムシウタ』を書いていた岩井先生の作品だな」って感じるべきですよね。
でも今作は、作品そのものの設定や表現が被っていることで「あーこれは確かに『ムシウタ』と似てるね」って感じました。
これってすごい違いだと思います。。。

私は“岩井節”を読みたい・感じたいから先生の本を買ったのです。
それがなければ、物語の内容がどんなに面白かろうと、ラノベ作品としてのクオリティが高かろうと、満足感は得られません。。
その意味では今作よりもサイハテ最終巻の方が上でした。
サイハテ03でのドクや陸との会話や関係性には岩井節がきいてて面白かったですから。

うーーーん。上手く伝えられているでしょうか。
とにかく私の胸の内には、かつてあの漫画家さんに抱いたのと同じ感想があります。
時流に合わせて欠点を直していったら、良いところが消えちゃったというか。
もしこの声が岩井先生へ届くならば、
『クレヨン王国 新十二か月の旅』(著:福永令三)をオススメしたいです。
……偉そうでほんとごめんなさいorz


それでは本編の感想にうつります!(

ストーリーはまぁまぁ面白かったですね。
主人公達が危険な地域(クリティカル・エリア)に乗り込み、敵(EOM、クリプテッド、他のレイダー)と戦い、ライバル?(救務庁)を出し抜き、がんばってラスボス(ハーメルン)に挑み、とりあえず成果を出しました。
本当の(彼ら自身の)問題解決はこれからだ!……というとこでエンド。
うん、いいんじゃないかな。
シリーズ全体の方向性を示しつつ、一つのお話をきっちりまとめる。
もし今作でシリーズが打ち切りになっても哀しくならない作り方です(
さしずめ蓮次たち“奪還派”は特環の東中央支部(≒土師&大助&詩歌)陣営、アルテミスが言ってた“反撃派”は序盤の茶深陣営やハルキヨ陣営、救務庁は特環の中央本部陣営ってな感じの立ち位置になるのでしょう。
なーんとなく今作の雰囲気を見るに、ムシウタではやれなかった「敵との共生エンド」でシリーズを締めくくる予定なのかな??
いいと思いますが、それをやるなら今回は早いうちから敵の来歴や思想を書いて、読者に心の準備をさせて欲しいですね。
ムシウタの場合は、01の時点で大助も詩歌も「“虫”、そして自分の心の弱さこそが真の敵」と明言しており、それに気づけなかった利菜が敗者として死にました。02でも有夏月というキャラについて「憎む(戦う)べき相手を間違えている」ことが示唆されます。
だから読者は「なるほどー。“虫”は許してはいけない絶対悪なのだな。意志を強く持って立ち向かっていかないと」という価値観を持ち、物語を読み進めました。
それなのに07で突然ぽっと出のキャラが「“虫”のいない世界から“虫”のいる世界へ」とか言い出すから「はぁ?ナニソレ?」となっちゃったわけです。
だいたい“虫”はいきなり人間に寄生してくるし、それ自体の意志やなんやかんやもさっぱり分からないし、対等な敵とは言いづらいです。
つまり「人間が“虫”を受け入れる」ということは、対等に戦って(話し合って)互いを認めて受け入れあうのではなく、人間側が折れて相手の要求を丸のみする形になります。
そんなのイヤでしょ!! どう考えても!!!
……ああ、似たような展開で思い出しましたが『機動戦士ガンダム00』の劇場版はよくできてたなぁ。
あんな感じでまとまるなら、今回はそっち路線でやってみてもいいと思います・w・

戦闘描写はカッコよかったです。バリバリ人が死にますね。流石クリティカル・エリア。
一点だけ、叶方vsアルテミスは納得がいきませんでした。
あのバトルをハンター×ハンターでたとえると、念能力を覚えたてのゴン(才能はあるけどまだ纏と絶と練しかできない)が、発を自在に操るヒソカに挑んじゃったって状況(いわゆる天空闘技場編)ですよね。両者の能力の状態を見るに。
天空闘技場編では、明らかにゴンは修業中&ヒソカが格上ってわかってました。ヒソカが舐めくさって手を抜きまくってるのが丸わかりでした。闘技場ゆえの勝敗ルールもありました。だからゴンは勝てました。まだまだ本当は全然敵わないけど、目の前の一つの勝負にだけは勝てたと言う描写には大きな説得力がありました。最後にヒソカが「次は本気でやろうね」と去っていく姿も威厳たっぷりでした。
翻って今作のバトルは……叶方が『ちゃんと勝ててる』ことに違和感があります。
だってどっからどー見ても叶方の方が格下ですもん。
トレーニングしてるとはいえ、平和な外の世界で元軍人?に鍛えられてるだけ。
身体は一般的な少女の域を出ず、中身はまともな常識人。
ショットを打ったら感覚が鋭くなる&生来の賢さも手伝って推理が冴える程度。
うん、ショボい。
一方のアルテミスは、日夜クリティカル・エリア内で生きるか死ぬかのギリギリを楽しみながら能力を育ててきており、身体も中身もバッチリ狂ってます。
どう見ても、アルテミスは能力者として叶方より遥か高みにいます。。。
ここはハンター試験編でヒソカからバッジを奪った時のゴンくらいの、格上の狂人に対して知恵と努力と才能と幸運で一矢報いた&「へぇーあんた意外とやるじゃん。気に入ったかもー」と認められて情報をもらった……くらいの表現でよかったのではないかと。
それでプライドを傷つけられた叶方が「私ももっと強くならないと!」と少年漫画のお約束展開に入れば、03以降での成長に期待しちゃうというものです。
現状、主人公らしくブッ飛んでる蓮次に対して、叶方がショボすぎますしねー。
うーん。


人物描写はちょっとお粗末でしたね。岩井先生らしくありません。
サイハテでのエリクほど酷くはありませんでしたが、冴えてなかったです。。
言いたいことは大きく分けて三つあります。
一つ目、蓮次が「ゆー姉ぇ」「ゆー姉ぇ」うるさすぎる!
もう聞き飽きたわーってなりました・w・
ムシウタ03の初季は可愛かったんだけどね……やっぱ女子と男子じゃ違うよね。
おまけに蓮次はわりと男らしいキャラなので(
二つ目、「ゆー姉ぇ」言ったあとの回想として出てくるのが彼女の消えるシーンと『初めての家出ごっこ』ばっかり!
もうそれ読み飽きタワーってなりました・w・
彼らはしょっちゅう家出してた設定なんだし、春に家出したときゆー姉ぇが「桜を見に行こうよ」と言い出して花見した(蓮次は桜よりゆー姉のが綺麗だと思った)とか、夏には海に(ry、秋は紅葉が(ryとか、エピソードの乱れ撃ちでよかったのでは。
それこそ岩井節炸裂で蓮次と夢衣への愛着が増したと思うんですが。。
三つ目、これが一番気になったポイントで、お兄ちゃん(翔一)が残念すぎる!!
いちおーこのヒト、作中ではカッコいい役回りのはずですよね。
ムシウタでいう土師圭吾的な。
しかし圭吾の爪先にも及ばぬ残念っぷりで頭が痛くなりました。。
蓮次、叶方に次ぐ重要人物なはずなのになー。

どうやら今作での翔一の行動目的は広義で「蓮次を守ること」のようです。
①大手企業の内定を蹴って救務庁に入り、失踪者の捜索に携わろうとした→夢衣を残して一人で帰ってきた蓮次を周囲の非難から守るため。二人の家出ごっこに加担していた自分の責任も果たすため。また、なんとか夢衣を取り戻して弟の心を救うため。「大人の俺が頑張ってやるから、まだ子供のお前は無理すんな」という意味も含む。
②救務庁で夢衣らしき人物を見つけ、その正体を暴こうとした→本当にその人物が夢衣なら彼女を探す必要はなくなるが、クリティカル・エリアで何があったのか疑問が残る。別人でもしかり。彼女はただ消えたのではなく、もっと大変な事態に巻き込まれているのかもしれない。とにかく蓮次のために詳しく知らねば。
③なんだか怪しいレイダーの素性をつきとめようとした→もしかしたら蓮次かもしれない。なにやってんだあのバカは。「大人の俺が(ry」って言ったのに!止めないと!
………うん。過保護ですね。ブラコンバカ兄貴です。
そして残念なことに、①~③のどれも成功していません。
①せっかく探索課に入れそうだったのに、受け答えに失敗してチャンスを逃す(そもそも救務庁における探索課の存在意義・内情をよくわかってなさそう)。ダサい。ダサすぎる。あんた何のために救務庁入ってんの。
②接触はしてみたけどそれでおしまい。さっぱりちゃん。ええー……。
③逆に弟を窮地に陥れたよ!「もし本当にその怪しいレイダーが蓮次だったら」ってことまで想定して行動しようよ。おまけに蓮次のチャチな嘘をマジで信じちゃってるし。。
いや、うん。翔一と圭吾を比べるのが間違いなのでしょう。
前者はあくまで近所の皆の人気者程度の、一般人よりは優れているけど普通のひとなのでしょう。ウルトラスーパーハイスペックだった後者と同列に語ってはいけません。
それにしても……弟のことを何一つわかってない……。
やってることが全て無意味……。
どこまで行っても物語の本筋(真相)に関われない道化者……。
カッコわるー……。。。
あとやっぱり情報収集手段が「能力のある女性を恋愛感情から篭絡する」ばっかりってのが気に入りませんね。
別に行為自体はいいんですよ。
男性として最悪で大キライだけど、悪役とか黒ヒーローならそれも一つの魅力ですよ。
しっかし、他に情報を得る手段がないって情けなさすぎない??
救務庁のパソコンをハッキングする(パソコン系の天才)とか、女性だけじゃなく男性にも取り入りまくる(要するに天性の人たらし)とかさぁ、他にもありとあらゆる手を尽くそうよ。。

うーん、どうせならはっきりすっぱり「道化キャラ」として描いてほしかったなぁ。
作中では「容姿端麗頭脳明晰、人望もある好青年。実は弟のために後ろ暗いことやっちゃってるけどね、それもまたカッコいいでしょ」みたいな雰囲気を醸し出してるのに、実物がひたすら残念だからなーー。。

情報源を女性関係に集中させるなら、いっそ思いっきりキラキラなホスト系キャラ(ただし実は芯が強い)でよかったんじゃないかな。。
世の中の全ての女性は、イケメン過ぎる俺にメロメロ!
このスマイルとテクニックを駆使して弟を救ってやるぜ!!……的な。
「俺は情報を得られて嬉しい、彼女たちはイケメンと甘いひと時を過ごせて嬉しい。ウィンウィンだね!」と、無邪気に笑うくらいでいい。
もしくは年齢をぐっと上げて、お兄ちゃんじゃなくてオジさん(母親の兄とか)でもいいですね。実務能力は低いけど、上司にすりより部下を抱き込み、ドロドロな人間関係を上手く立ちまわってのしあがってきた40歳くらいのオッサン。東京厄襲までは防衛省あたりの幹部クラスの官僚で、救務庁立ち上げの際、蓮次のために異動(ナンバ-3くらいの地位)した。救務庁でも、地位を利用して女性幹部に片っ端から手を出したり、金をバラまいたりして情報を入手!みたいなギタギタに脂ぎった嫌なオヤジでいい。
とにかく、とことん吹っ切ってくれたほうがよかったな。
そしたらあの残念さもギャグとして笑いとばせる。
できれば正妻(松子さん)も出さないでほしかったなー。
ああいうの出されると、その人が可哀想で翔一が嫌いになっちゃう。。
主要人物を無駄に嫌いになりたくないんですよね、私は。
もしくは正妻もアクの強い女(峰不二子系)にするとか。

あと、「どうしてそんなに蓮次を大切にするのか」を掘り下げてほしいです。
もしかしたら私が読み落としただけかもですが、今作をさらっと一読した印象だと「翔一は“良い子”だから『家族は大切にしなきゃ』と考えてて、だから蓮次も守ろうとしてるのかな」って程度で。
「たったそんだけの薄っぺらい想いのために、この人は男性として最低なことをしてるのか。おまけにそれで何一つ成果を上げられてないって……カッコわるすぎww」と思ってしまいました。
実はかつて翔一は弟に命を救われたことがあり(蓮次は無意識)、恩に着ているとか。
蓮次が生まれてすぐ父親が亡くなったため、翔一はせめて精神的な部分だけでも秋月家の大黒柱になろうと決意し、ずっと父親のような気持ちで弟を見守ってきたとか。
そーいう共感しやすく憶えやすく深イイ感じの理由づけがほしかったなぁ。
そしたら、翔一がどんなに嫌なことしてても空回りして失敗してても「この人は弟くんラヴだからねー。まぁがんばってね」と生温かい目で見ることができたと思うのです。

うーーーん。どうなんですかねーー。
岩井先生は本気で翔一をカッコいいキャラとして描いているのか。
元から道化者ポジションで登場させたけど、中途半端になってるのか。
分からんです。
私からすると、現状の翔一は全く魅力のないパッサパサなキャラですねー。
身も蓋もない話ですが「お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんにしておけば、まだマシだったのでは?」と思います。

再び圭吾を引き合いにだしますが、彼の良さの一つが「妹を溺愛するシスコン兄」という非常に分かりやすいキャラ性でした。
次の一文だけを読んでパッと考えてみてください。
・お兄ちゃんが可愛い妹のことを大好きで過保護に守ってる→分かる。
・お兄ちゃんが愚弟のことを大好きで過保護に守ってる→???
でしょ。
「お兄ちゃんが妹を愛してる」、そこに詳しい説明はいらないのですよね。
だから今作も、翔一が蓮次を守る理由の描写を省く(現状の描写程度に抑える)のならば、兄じゃなくて姉にすればよかったのでは。
一葉(かずは)とかそれっぽい名前にして。
そうすれば「お姉ちゃんが愚弟を大好きで過保護に守ってる」という分かりやすい構図になりました。
さらに。
弟を守りたいあまり、上司にハニートラップを仕掛けまくるイケイケなお姉ちゃん。
集めた情報をもとに色々考えて行動するけど全部スカに終わるドジなお姉ちゃん。
頑張ってるのに弟からは「ウザい」って言われちゃう哀れなお姉ちゃん。
……可愛いと思いませんか??(
これは私の価値観ですが、男性が女性を篭絡してると「弄びやがってッ。この野郎ッ」ってイライラするんですけど、女性が男性を篭絡してると「女の武器を活用してて逞しいなー…」って思えちゃうんですよね!
不思議と、あんまり嫌な感じがしない!!(
まぁスニーカー文庫の読者は若い男性が多そうなので、そういう方々がどのような価値観かはわからないですけども。
ぶっちゃけ翔一が男である必然性ってありますか??
現状は見当たらないような……ああ、夢衣と翔一がお似合いで蓮次が嫉妬するってのがあるか。でも大したことじゃないよね、うん。
まぁ、ぶつぶつ言っても仕方ありません。
彼の今後の活躍に期待しておくことにしましょう。


泣ける度は微妙です。
ヒマワリやアルテミスの正体をネタバレするとこは「どうぞここで驚いて下さい!」、クライマックスのvsハーメルンは「どうぞここで泣いて下さい!」感がバリバリでノリきれませんでした^^;
流石の私も、ヒマワリがサイコロの子っていうのは前作の時点で気づいてたし、アルテミスのこともUDXに到着した辺りで「あやしいな」と思ってましたのでね(誇らしげ
クライマックスの盛り上げ方はよかったと思うのですが、登場人物たちに充分な愛着を持ててなかったので、いまひとつ没入できませんでした。。。
一番ウルッときたのは、真愛の「嘘ばっかり」だなぁ。
幸せだった頃の夢衣と真愛の幻影(過去)とか挿入してくれたらもっとよかったかも。

和む度はぼちぼち。仲間を救いつつ迷子を誤魔化す魚瀬ちゃんは可愛かったです。
恋してる度もぼちぼち。蓮次→夢衣は鉄板ですね。
しかしそれゆえに私の中の彼は『大助2号』でそれ以上にも以下にもなりませんでした。

最後にイラストについて!
表紙のヒマワリは可愛いです。つまり夢衣ちゃんもカワイイ。。
カラーも挿絵も気合が入ってて綺麗でした!
安定感のある絵柄で良いですね。素晴らしい絵師さんです。癒されます。
魚瀬さんもキリッと美人でいいと思います。
……今作の女性の髪は、アルテミス以外みんなスーパーロングですね・w・
集合絵を描くときがきたら苦労しそうです。笑


ふわー。いっぱい書きすぎてつかれたー><
あれこれ言いましたが、蓮次が『大助2号』の印象から脱却してくれて、その他の人物にも思い入れが持てるようになってくれば、さらに楽しめるシリーズだと思います。
長く続いてくれるといいな。

『東京侵域』についてはそれでよしとして。
個人的な希望を言えば、もっと落ち着いた物語を読んでみたいですね。
消閑でのデビューからムシウタを通じて私を魅了してきた岩井作品の持ち味は、
「切なくも温かい人間ドラマ」ですから。
当たり前すぎて、小さすぎて、何気なく見過ごしてしまいそうな感動を拾って、
ぱっと目の前に突きつけてくださる。
まさに、澱んだ世界を切り裂く新鮮な風。
深い海の底を貫く一条の光。
それを作れる才能を、十代の少年少女向けバトルファンタジーばっかで消費してちゃもったいないです。
消閑~ムシウタ全盛期のファンが、今ちょうど20代~30代半ば頃。
その世代を狙い撃ちした作品を出してもいいんじゃないかな。
たとえば有川浩先生の『空の中』とか『図書館戦争』みたいな、若い子も楽しめるけど大人も楽しめるラノベ風小説を書いてほしい。
岩井先生なら絶対にできるはずですよ。
同じ角川なんだしメディアワークス文庫で出したりすればいいのに。。
編集部仕事して!(

いやほんと、編集さん大丈夫ですかね?
まず今作を現状で出版した判断には疑問しかありません。
普通止めるでしょう。「これは今出すべき作品じゃありません」って。
もしこれが『週刊少年ジャンプ』とか『なかよし』とかなら絶対に止められてるって。
つい最近完結したシリーズとほぼ丸被りの新シリーズを連載させませんでしょ。。
羽海野チカ先生はハチクロから3月のライオンへ。
荒川 弘先生はハガレンから銀の匙へ。
それが普通でしょ。。
ムシウタから東京侵域って、絶対おかしいよ!!(


………。はい。
ほんとうに長くなってしまいました^^;
以上で【東京侵域:クローズドエデン 02】のレビューを終わります。
ありがとうございました。
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