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2015.08.15 (Sat)

【全力!ラノベレビュー】消閑の挑戦者 Ⅱ【其の六】

「無理かもしれへん。もう間に合わんかもしれへん。
 でも、それでもいっしょに逃げるべきなんとちゃうの?」
「君には永遠に分からない。君は、私ではないのだからな」
「一番ひどいのは、自分のことを大切に思っとる人を残していくことや!
 そんな簡単なことが、なんで分からへんねん!
 あんたたちは天才なんやろ!」

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どうなりたい、というはっきりしたイメージがあるわけではない。
何かがしたい、というわけでもない。
ただ、漠然とした感情のわだかまりだけがあった。

【注意事項】 
(1)ネタバレありです。同作者の他作品にも言及する場合があります。
(2)登場人物データは琳珂の主観で分類・掲載します。
(3)評価は琳珂の独断と偏見と読書歴に基づいて、思うがままに書きます。
 コメントを下さった場合は一応反応しますが、議論をするつもりはございません。
 予めご了承ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小槙って本当に可愛いですね(突然
これが二回目の挑戦ですが、改めて良いデザインだなーと思いました。
灯ちゃんも描いてて楽しかった!色遣いが綺麗っ。
祥は男子にしてはコツを掴みやすい気がする(

それでは追記から【消閑の挑戦者 Ⅱ:永遠と変化の小箱】のレビューを始めます。

【More・・・】


書籍データ   ―誇り、そして命を賭けた究極のバトル・ゲーム。

 【著】岩井恭平    【イラスト】四季童子
 【出版社】角川書店  【初版発行日】2003年8月1日  【ページ数】316p

登場人物
 【主役】鈴藤小槙、春野祥、矢羽・ジラフェ・時字、灰火秋灯
 【準主役】灰火アキヒコ(晶良)、リリカ、レイヴン、ジョセフ・ヘンリー
 【脇役】富二郎、ザキ、クロハ、カズホ、スミス・アルコニー、その他

評価   総合:★★★☆☆ ……行く先が見えないまま、船は出港した。 

 【ストーリー】★★★☆☆  【戦闘描写】★★★☆☆  【人物描写】★★★★☆
 【泣ける度】 ★★★☆☆  【和む度】 ★★★★☆  【恋してる度】★★★★☆
 【イラスト】 ★★★☆☆

レビュー

第一巻を読んだ後「シリーズとしての着地点が見えないなぁ」という感想を持ちました。
それは今作でも変わりません。
面白かった。面白かったけど……こっからどうしたいの?という。

そもそも小槙は第一巻の終了時点で『完成』したはずでした。
人類の王たる果須田裕社がそう告げたのですから。
しかし2巻では、本人が「まだあたしは未完成や」と言っています。。
うーむ。
彼女にそのようなセリフを言わせるのであれば、このシリーズは『鈴藤小槙と春野祥が自分を完成させる物語』にするべきだったのだろうと思います。
果須田裕社は登場時点で王として完全な能力を備え、感情が全くありませんでした。
小槙はその逆をゆく姿を描けばよかった。
すなわち登場時点から徐々に能力を育て、感情を身につけていくのです。
第一巻では“超飛躍”の王としての能力に覚醒し、“寂しい”という感情を知る。
第二巻では“超飛躍”の使いこなし方を覚え、“怒り”という感情を知る。
そのようにして巻を追うごとに『“超飛躍”の王として活躍していく(様々な発明・発見を成し遂げ、果須田裕社さえ超えるような業績を作っていく)』と同時に『人間らしい感情を一つずつ身につけ、豊かな人生を送るようになる』様子を描くべきでした。
第一巻では常に無表情でクラスメイトとろくに話もできていなかった小槙が、第五巻では近くの席の子と談笑するようになるとか。
過去、無意識のまま傷つけてきた人々へ謝罪をする場面も必要になるでしょう。
そして春野祥は、彼女の活躍と成長を手助けしつつ「このままじゃ俺は置いて行かれるばかりだ、どうすればいい」と葛藤していけばよかった。
初めは彼女と同じ方向性で進化していこうとするも、それでは絶対に彼女に並び立つことはできないと痛感し、挫折し、一度はその明るさを失うほどに絶望して、再び「俺は俺だ。俺らしいやり方で進化していかなければ」と立ち直る姿を描くべきでした。
小槙には不可能で彼だけが可能なことってなんだろう。
格闘技のチャンピオンを目指すとかかな……?
うーん、難しいですが。。。
とにかく祥は祥自身の努力で、彼なりに納得できる“理想の自分”を獲得する道を辿ったことでしょう。
彼が『完成』する頃、小槙の成長物語も最終局面を迎え―彼女が最後に身につける感情は、彼に対する“愛”であったことでしょう。
そのとき祥は「俺は一度も置いていかれてなどいなかった。あのゲームでパートナーになったときからずっと、そんなことを思っていたのは俺だけだった。小槙は一度も、俺のことを“自分より遅れた存在だ”と思ったことはなかったんだ」と気づけばよいのです。
めでたし、めでたし。ハッピーエンドです。
そこへ入港するまでの過程として、様々な事件やゲームに参加していくべきでした。
多分、そういう方向性でよかったはずです。
うーん。
今作の時点で明確なゴールを描けていなかったことが、現在でも『消閑の挑戦者』が完結していないという我々ファンにとっての悲劇の原因なのかもしれません><

さて。
戯言はこのへんにして、本編のレビューに移りましょうかね。笑


今作は前作から二週間後、夏休みに入った小槙と祥が豪華客船に乗り込み、灰火秋島へ向かうところから始まります。
……ってことは前作も時期は夏だったんですね(今更
防御人は暑苦しいカッコしてるし、表紙の小槙達の服も長袖だしで、てっきり春~初夏(GWくらい)かと思ってました。。
あとでもっかい読み直してみよう。。。
ともかく、和やかにチェスゲームを観戦してたら船がハイジャックされ、灰火秋島が噴火し、テロリストとも戦い、同時多発的に事件が起きまくる大変な展開になります。
わくわくどきどきですね。
ストーリーとしてはよくできていると思います。
ただ先述のように『このお話がシリーズの中でどういう意味を持つのか?』という点が希薄なため、★3とさせていただきました。

戦闘は安定しております。
一巻より専門用語が減って戦術的な部分が増えていますね。
ふわっとしていた“超飛躍”も、“理論型”と“閃き型”という分類が判明します。
チェス勝負のところは描写不足だったかも。
突出して良いところも悪い所もないので★3です。

人物描写は、全体的に一巻より分量が増え、表現の幅も広がって厚みが出ております。
ゲストヒロインの灯ちゃんは明るく爽やかで良いですね。
Vサインして自己紹介するところが特に好きです・w・
ただ、“超飛躍”覚醒シーンにはもう少しドラマがほしかったなぁ。
祥のサポートが強すぎて、中盤以降の彼女の活躍が薄まってしまったのは残念です。
不条理な晶良もいいキャラしてますね。
現実にいたら殴り飛ばしたくなること必至ですが(
どんなに言葉を尽くして正論を伝えても、説得できない相手はいますからね……。
物語上最重要ポイントだった彼女の分裂した人格も、小槙の「哀しいけど悔しいけど受け入れるしかない」という感情も、よく描かれていたと思います。

アルコニー博士と小槙のくだりは、祇園寺博士とのことを彷彿としますね。
……しかしこれじゃあ『小槙も裕社と同じ、劣った一般人を畏縮させる存在ですよ。これからますます一般人から遠ざかり、裕社に近づいていきますよ』と言っているようなものじゃないですか。
裕社の最期の望み、すなわち第一巻の物語全てが無意味だったと言うんですか??
ダメでしょ!
ここで彼を出すのならば『前作で裕社に勝利した小槙は、それまでとは変わったんだ』ということを証言させるべきでした。
博士の過去話のあと、
「私はあの時、まだ幼かった君の容赦ない瞳を恐れて逃げ出した。
 しかし……今の君は、当時とは少し違うようだ。
 あの時よりも高い知性を感じるのに、あの時ほど怖くない。
 一体何故だろう?」
「なんでやろな。特に何かをした覚えはあらへんけど。
 ……ああ。そういえば、このまえ裕くんとゲームをしたんや」
「裕くん? 果須田裕社のことか?」
「あたしにとっては、ただの幼馴染やってん。
 それでな。あたしは、裕くんみたいになったらあかんと思ったんや。
 裕くんにもそう言われたんや。
 どうしたらええんかは、具体的に分からへんけどな」
「そうか……」
「あのな、博士。あたしには……博士をこんな風にするつもりはなかってん。
 そんなつもりで博士を見てたわけじゃないねん」
「……そうか」
「あのな。今更、こんなん言うてもしょうがないとは思うんやけどな。
 ごめんな、博士。ごめんな……」
「…………」
そんな会話をさせ、第一巻での祇園寺博士とのエピソードと対比させることで『小槙は裕社とは違うんだ。あのゲームを経験して変わったんだ。これから、彼とは違う方向性の“王”になっていくんだ』と読者へ伝えるべきでした。
これだけでも今作の存在意義がはっきりしたはずです。
もったいない。

キリンは切なかった。超絶切なかったです。
あれだけ全てを捨てて晶良を救おうとしたのに救えないからなぁ。
でも彼はずっと、生きるためとはいえ沢山の人や物を殺して壊してきたのだろうから、それに対する報いとも受け取れます。
あの災害から晶良を逃がせたとしても、彼女の人格は既に崩壊寸前だったし、ハッピーエンドになったとは思えないしね……。
灯ちゃんとはシアワセになってね!
……一番可愛そうなのはリリカか……。
レイヴンは(多分)死んだし、キリンは別の生き方見つけちゃったし。
頑張れリリカ、強く生きてくれ。

泣き所は、灯の「お姉ちゃん!」ですね。
これはやばい。不意打ち過ぎます。
彼女は本当に良い子です。。。
泣けると同時に、晶良への怒りがふつふつと湧いちゃいます。
もーまじ「一族の使命」だとかなんだとか理屈をつけて勝手な行動して、大切な人を泣かせる人キライ。
それで勝手に自分では自分のこと納得してるし。
仕事人間っていうのかな??
もう超嫌い。
大切な人のためなら理屈も信念も仕事も全て投げ出すような人が私は好き!(
つまりキリン好き!(

このシリーズの凄いところは、どんな殺伐とした戦闘があっても、合間のちょっとしたシーンで和めるということ。
主人公たちのキャラクターのおかげですね。
素晴らしい。
小槙が「ごっついなぁ」と言っているだけで、ふわーっと幸せな気持ちになります。
祥が「鈴藤さん」と口にするだけで、ニヤッとできます。
なんでだろうな。
やっぱり彼女のとぼけた雰囲気と、彼の強さと小槙への複雑な感情がなせる業かな。
小槙はどんな切羽詰まった状況に置かれても、絶対にマイペースを崩さないから、安心して見ていられる。
祥はどんなに殴られてても蹴られてても、絶対に屈服せず反撃できるだろうと分かっているから、安心して見ていられる。
いいコンビです、ほんとに。

恋してる度はキリンがMVPです。
「俺と一緒に島を出ないか」…………一度は言われてみたいですね。。
これで十代だもんなぁ。どんな良い男になるんだろうか。
灯ちゃんが羨ましいゼッ。

イラストは、えーと、祥が安定しなさすぎて笑えます・w・
まず表紙。
ム、ムキムキすぎやろ!!!
彼は細マッチョだと思うのですが、この腕はやばいです。。
本文に「腕は細いけど引き締まってる」(p.13)って書いてあるのに。
第一巻の表紙と比べても差がありすぎます。
半袖か? 半袖になったからなのか??
その後も挿絵で出てくるたびに顔が違うのでおもしろいです(
女の子はみんな可愛いんだけどなー。。
特に小槙はアンニュイな魅力がたまりません。
そういえば灯の色構成(髪が緑でヘアゴムが赤)は詩歌と同じですね~。


最後になりましたが、今作の『永遠と変化の小箱』というタイトルはイカしてますよね。
『変わらないためには変わり続ける必要がある』。
私自身の信念とも重なります。
いやむしろ、思春期に読んだ今作の内容とタイトルから、こんな一見矛盾した信念を持つようになったのかもしれません。笑
私は晶良のことを好きにはなれませんが、彼女から灯へ受け継がれたこの小箱のロマンは大好きです。

以上で【消閑の挑戦者 Ⅱ:永遠と変化の小箱】のレビューを終わります。
ありがとうございました。
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