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2015.08.04 (Tue)

【全力!ラノベレビュー】消閑の挑戦者 Ⅰ【其の四】

『鈴藤さんは、いつも寂しそうだった』
「彼女は何も感じない」
『鈴藤さんのことを、お前が決めんな』
「彼女も認めない」
『だったら、俺が決める。鈴藤さんは本当は寂しいのに、それを認めないだけだ。
 そのことを知ってる俺が、鈴藤さんの所へ行く。
 誰も近づけずにいた鈴藤さんのそばに、俺が行く。
 邪魔をするなら、お前を倒す』

skc1gregre.jpg

―春野祥らしい、彼以外にありえない“潔い”言葉だった。

【注意事項】 
(1)ネタバレありです。同作者の他作品にも言及する場合があります。
(2)登場人物データは琳珂の主観で分類・掲載します。
(3)評価は琳珂の独断と偏見と読書歴に基づいて、思うがままに書きます。
 コメントを下さった場合は一応反応しますが、議論をするつもりはございません。
 予めご了承ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長年、岩井先生のファンをやってますが、消閑の表紙を模写ったのは初めてです。
この三人描くのはどう見ても大変そうなので敬遠してたのです!
「小槙だけでいいかな?」とか「新汰のズボン手抜きしていいかな?」とか何度も逃げそうになったけど、がんばりました。
私がんばりましたよ!!・w・


それでは追記から【消閑の挑戦者 Ⅰ:パーフェクト・キング】のレビューを始めます。

【More・・・】


書籍データ   ―第6回角川学園小説大賞優秀賞受賞作、鮮烈に起動。

 【著】岩井恭平    【イラスト】四季童子
 【出版社】角川書店  【初版発行日】2002年12月1日  【ページ数】318p

登場人物
 【主役】鈴藤小槙、春野祥、祇園寺新汰
 【準主役】果須田裕杜、果須田明葉、祇園寺蓮、詩音間チカ、安住蔵人
 【脇役】サラ・マクラフラン、ユマ・サーマン、イェレミ、その他防御人など

評価   総合:★★★★★ ……原点にして頂点とはこのこと。 

 【ストーリー】★★★★★  【戦闘描写】★★★★★  【人物描写】★★★☆☆
 【泣ける度】 ★★★★★  【和む度】 ★★★★☆  【恋してる度】★★☆☆☆
 【イラスト】 ★★★☆☆

レビュー

言わずと知れた岩井先生のデビュー作。
今読み返してみると、その後の作品に登場する様々な要素が盛り込まれていることに気づきます。
それは世界観だったり各種描写だったり、『パトリシア』『蓮』といった単語だったり。
まさしく先生の良さが詰まった作品ですね。
今作の解説を読むと、応募当時そのままの原稿を読んでみたくなってしまいます・w・

私の好きな人や、身近な友人の多くが「ムシウタよりも消閑の方が好きだ」と言っていました。私も利菜に出逢わなければ、同じ意見だったかもしれません。笑


それでは本編を見てみましょう。
主人公・鈴藤小槙の人物紹介から、同級生の春野祥との邂逅によって世紀のゲームに参加してしまう流れは非常に心躍りますね。
今作の魅力の大半は、小槙と祥の人柄と関係性にあるといってもいいでしょう。
どんな過酷な状況に置かれても「なんでやろう。分からへん。分からへんわ」と呟きながらも前進を続ける小槙。
戦いを通じて明かされていくその真意、本人でさえ気づいていなかった心の奥―。
彼女とはまるで正反対だけれども、自分の葛藤と向き合い、壁に挑み続ける祥。
普遍的な青春の心理を突いていますよね。
多くの少年少女が小槙に共感し、祥に憧れて、今作のファンになったはずです。
……『サイハテの救世主』に足りないのはここだよな~。
少なくとも第一巻のドクと陸じゃ、こうはいかんぜよ。

っと、直接関係のない愚痴がこぼれてしまいました。
先を続けましょう。
魅力的な主人公に支えられて展開する今作のストーリーには全く隙がありません。
果須田裕杜が仕掛けてくる斬新なゲーム、それにともなうバトルアクション、死んだ者と生き延びた者の物語、少年少女の群像劇、どの意味でも素晴らしい。
まさにパーフェクトです!

戦闘描写は、先生の作品群の中でも際立って面白いですね。
『ルール・オブ・ザ・ルール』というゲーム自体がよく練りこまれており、参加者たちが機転をきかせて様々なプログラムを駆使する姿には「ここから一体どうなるんだ?!」とワクワクさせられます。
またテコンドー、クンフー、相撲など各種格闘技が使用されているのも作品に華を添えています。
私は格闘技の知識に乏しいのですが、「とにかくすごいんだぞ」アピールばっかりの殴り合いより、具体的な技名を見た方が「すごー」と思えて好きです・w・

人物描写には、やはりまだ粗さが見えますね。
もちろん各人物の設定は良いです。構成も文句ないです。
ただ、文字数が少なくてあっさりなんですよねー。
これは間違いなくムシウタ以降の作品に軍配が上がります。
でも重要なのは内容ですよ。
どんなに美麗な文章で書かれていても、その内容がゴミだったら感動もへったくれもありませんからね。
小学生の作文でも中身が良ければ泣けるのです。
多少拙くとも内容が詰まっていて人物と自分の作品への愛を感じる今作の先生の文章が、私は好きです。

上では小槙と祥ばかり褒めましたが、祇園寺新汰の清涼感も素晴らしい。
蓮は渋くて味わい深いですね。
私も多少年を取ったせいか、祖父ちゃんの言いたかったことが身に染みるようになってきました。笑
生身が登場して半ページほどであんなことになってしまったのは悲しかったです。。
裕杜はラスボス感ハンパないですね。
彼と小槙のプロローグも印象的です。
今作を代表する名言として、こちらを書くべきかどうか最後まで悩みました。
しかし、彼から彼女への「自分で決めろ」というメッセージや抱えていた孤独、最期には感動するものの、それは小槙という希望があってこそ成立するものなんですよね。
私にとって、裕杜本人はそんなに魅力がありませんでした。
「あーそっかー天才って辛いよねー」で終わりというか。
だから名言には祥の台詞を選びました。

あと、蔵人とチカは惜しかったなぁ。
裕杜は「彼らにも影響を受けたのか?」と小槙へ訊ねますが、作中での彼女と彼らの関わりは薄すぎます。。
特にチカは祥とばっか喋ってるし一緒にいるし。。
彼らのキャラは悪くないと思うんですが、使い方がもったいなかったんじゃないかなー。
二巻以降でも活躍しないしね……。><

泣ける度はやばいです。
新汰と蓮から始まって、ちくちくと読者の心を突き刺す物語展開が続き、クライマックスで涙腺が崩壊します。
一方で、和む度も高いです。
苛烈なゲーム展開の中でも「ふふっ」と笑えてしまえるシーンが多いのは、主人公たちのキャラクター性のおかげですね。
哀しいところは哀しく、楽しいところは楽しく、メリハリが効いていると感じます。
いやー素晴らしいバランスだわ、ほんとに。

恋してる度は微妙。でも、それがいい・w・
あからさまなのはチカ→祥くらいです。
もうちょっと彼女が活躍してたら感動も増したかもなぁ。
そして肝心の祥と小槙は、あれはもはや愛だわ(ぇ
どう見てもキュンキュンしてない、恋ではない、でもお互いへの信頼を感じる。
いいですね~。
恋愛大好きスイーツ脳な私が「恋してないからこそイイ」と言いきれる関係の二人は、なかなかいません。笑

最後はイラストについて。
えーっと、まず、上手いとか下手とか言う前に、古いですよね。
これは現在から見てという話ではなく、私が初めて読んだ2003年頃の時点で「絵柄が古いなぁ」と思っていたんです。
物語は近未来的なのに、イラストは90年代前半の少女漫画(レイアースとかの時代)のような風情が……ミスマッチだなぁと。
個人的には嫌いじゃないです、この絵柄。
塗りや身体のバランスなどの癖は強いけど、それは個性でもあるし、キャラデザインしっかりしてるし。
少なくともイマドキのアニメやラノベにありがちな薄っぺらくて何の個性もない、かわいこぶりっこして男性に媚まくっただけのような絵に比べれば百倍良いと思います。
……毒のある言い方でごめんなさいorz

新汰は爽やかでオシャレなイケメン。
真面目な性格なのに青髪っていうギャップもヨシ。
小槙は正統派黒髪美少女(巨乳)。
余談ですが、長いあいだ私のなかでの「岩井先生の主人公キャラの巨乳度ランキング」では小槙がぶっちぎりの一位で、次に初季、その次は千晴でした(主にイラストから判断したものです)。
現在は叶方ちゃんと陸ちゃんがいるので、誰が一位なのかもうしばらく悩む予定です。笑
祥は「男は顔じゃねぇ! 生き様だ!」を地で行くイメージですね。
もう一人のヒーロー、新汰と対照的で面白いです。
模写るのは大変だったけど楽しかったです~。


長くなってしまいました。
ここまで書いてちょっと思ったのが、
「消閑はこの一冊の読みきりで良かったんじゃない?」ってこと。
シリーズ第一作として今作を見たとき、「シリーズとしての着地点がどこになるのか」がまったく見えないんですよね。
小槙は祥と言う最高のパートナーを得て、最大の敵を倒して、パーフェクトな存在になったんだもん。これ以上、話を続けようがないよね。笑
まあ実際は続刊が出ていて、二巻も三巻もなかなかの良作なのですが。
やっぱり「がんばって捻りだした感」が否めない。

昔、私の好きな人がレオナルド・ダヴィンチの言葉を教えてくれたことがあります。
『最後にどうなりたいのかを最初から考えるのだ』という名言を。
出版されるかどうか分からない、されたとしても何冊続けられるか分からない、そんなプロの作家さんとして、遠い先を見据えて書き始めるのは難しいのだろうと思います。
でも岩井先生には、この意識を大切にしていただきたいなぁ。

……その点でいえば『サイハテの救世主』は改善されているんですよね。
「論文が引き起こす問題を全て解決する」というゴールが用意されているのだから。
ただ、そのゴールにあまり興味が持てないんですよね。
全ての元凶たる主人公のドク自身に魅力がないから。
読者として彼に憐れみを抱きはするけど、共感も憧れもしないし、見ていていたたまれない気持ちになるから……。
これは私個人の感想ですがね><


「作風が似ている」という理由で、ちょいちょい『サイハテの救世主』の話題を出してしまってごめんなさい。
以上で【消閑の挑戦者 Ⅰ:パーフェクト・キング】のレビューを終わります。
ありがとうございました。
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