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2012.09.03 (Mon)

12週間連続企画!ムシウタレビュー 【07.夢遊ぶ魔王】

 ―バカみたいだ。戦えば失うのに……戦わなければ、失った上に後悔するんだ。

「戦わないということと、逃げるということは同義ではないのだ」

 ――ああ……。
   ずいぶん遅れてしまったけど、今からでも追いつけるかな。
   追いつき、前しか向いていない彼の、さらに前へ出る―……
   そうしてまた、“かっこう”と正面から向き合うことができるかな……?

rbs7a.jpg

「我々報道部の行進は、誰にも止められないのだ」



企画最初の記事(01のレビュー)や最新の記事に載せている【注意事項】に目を通してから、お読みください。


遅くなってごめんなさい。まるまる1週間…あぁ…。
先週の月曜に書き始めてたんですが、まとめるのに時間がかかってしまいました。
でも、諦めたくなかったのでがんばりました。

それでは追記にて、【07.夢遊ぶ魔王】のレビューを開始します。

【More・・・】

 
書籍データ   ―それは、最高で最悪の大スクープ。
 【初版発行日】2006年6月1日 【ページ数】404p
 【主役】有夏月(“月姫”)、南風森愛恋、佐藤陽子
 【準主役】 なし
 【脇役】土師千莉(“火巫女”)、五郎丸柊子、石巻喜久二、“おりおん”“照”、“しぇら”
      ル―シィ、塩原鯱人、菰之村茶深、“コノハ”、“浸父”、大喰い

評価   【総合】★★★☆☆
  ストーリー:★★★☆☆ 戦闘描写:★★★★☆  人物描写:★★★★☆
  泣ける度 :★★★★☆ 和む度 :★★★☆☆  恋してる度:★★★★★
  ヒロイン :★★★☆☆ 表紙  :★★★☆☆

レビュー


やってきました7巻目。
02で登場した当時から
「利菜と千莉で二股してたのかよっ」とのツッコミを欲しいままにしてきた有夏月くんが、
さらに二人の美少女に手をかけようとする巻です。

…すみません、ウソです。冗談です!
でも…まぁ…あたらずとも遠からずですよね。
正直、序盤は思いっきりそうですし。
途中で陽子の詳細が明らかになって、なぁんだ畏怖してただけかぁとホッとしたのも束の間、
ラストで愛恋に「帰って来る」宣言ですもんね。
ちょっ、結局千莉と二股じゃん!!っていう。。(片想いだけど)
私がしつこく有夏月をダメンズダメンズ言うのは、07の影響が大きいです。笑

なんでかなー。シャチは全然そんな思わないのに。
そう、シャチは女好きの遊び人だけど、それはあくまで遊びで、
本命には一途っていうのが分かるんですよね。
遊び人な部分は「壊れてる」人格のものですし。
きっと本来の彼は、純粋で一途なひとなんだろうなぁと思う。。

有夏月も、別に遊び人じゃないのは分かるんですけどね。
っていうか、多分本人は悪意ないどころか普通にしてるだけなんですよね。
誰にでも普通に、当り前に、心から優しい。
それがいかに大変で有難くて魅力的なことか。
見た目カッコよくって、体力あって、(虫憑きとしての実力も高くて)。
悩んでるとこさえ素敵に見えるくらい、優柔不断だけど心が真っ直ぐで。
そんなののそばにいたら惚れちゃいますよね…。
…本人、自覚ないんですよね…。
その無自覚ゆえの自然さも彼の良いところではあると思うんですが、
あまりにもあまりにもあまりにも。。。。

やっぱり有夏月はムシウタ一の罪作り、最高で最悪のダメンズだと思います。

はい。
07は、02からずっとダメンズ街道をひた走っていた有夏月が、
ようやく“かっこう”への誤った激情を克服してカッコよくなっていく過程を楽しみつつ、
恋愛面では全く変わらない恐ろしいほどのダメンズっぷりを発揮してくれてやきもきする巻です。
そこが見所です。←ぁ


まずは時系列の確認です。
 0.00 愛恋、ビデオに「咲き誇る桜」を映す。
 1.00 紫央市でのvs大喰いから数日後。
      二週間以上経過後、有夏月、愛恋の学校に二年生として編入。
 1.03 一週間経過。美術館で“おりおん”欠落者に。
 3.01 数日経過。遅咲きの桜が満開。利菜の幻影を見て有夏月覚醒。
 3.04 数日経過。魔王覚醒→降臨。決戦。
以上から07は、「三月下旬~四月下旬頃」のお話といえるでしょう。


ストーリーは面白いです。構成の高度さから見れば星五つです。
準主役が事実上いない(The othersも主役級。おそらく魔王、ジャーナリストであるか否かで切りかえられている)というのも新鮮ですね。
しかし個人的に看過できない部分があるので、敢えて厳しめの評価にしました。

まず構成の良さについて。
07では、一つのお話(事実)の中で、二つの物語(真実)が進行していきます。
お話の舞台は名も覚えられぬ町。登場人物は主に三人。
少し電波な報道部長と巻き込まれた新入部員?が、魔王に戦いを挑むストーリーです。
そこにある一つ目の真実は、前述の有夏月の物語。
二つ目は、ただの少し変な少女と見せかけて、実は元魔王だった愛恋と、
勇者を目指す地味な少女と見せかけて、実は魔王だった陽子の物語です。

前者はもう細かく語るまでもないです。
あえていえば利菜ファンとして涙涙、恋する乙女仲間として「有夏月のばかやろー」です。
(もうやめときます)

後者について熱く語りましょう。
頭の良い方、推理好きな方以外は、中盤~後半にかけての真実のどんでん返しに驚いたと思います。
同じものを愛する友人同士に見えた少女達は、
実は全く違うものを見ていました。
その様子を整理すると以下のようになります。
・陽子にとって
 魔王:魅車八重子 虫憑き:八重子の手下(闇の軍勢) 霊域化した“虫”:正義の武器
 自分:魔王に恐怖し、打倒を目指す勇者→魔王に憧れ、遂に追いついた新たな魔王
・愛恋にとって
 魔王:佐藤陽子 虫憑き:普通の人間と同じ 霊域化した“虫”:陽子に歪められた闇の軍勢
 自分:謝った真実で世界を恐怖させた魔王→本当の真実で世界を救おうとするジャーナリスト
うーん、正反対。
綿密に積みあげられたストーリーは大変面白いです。流石岩井先生。
絶妙なとこで出てくる鯱人、茶深、“しぇら”も良い味出してます。

ちょっとだけ素朴な感想を言うと。
私は初め、八重子を魔王と見てその野望を阻止せんとする陽子を好ましく感じていました。
彼女が辿り着こうとしていたやり方を知って残念に思い、失望しましたが。
ほんの少しだけ何かが違えば、陽子は「本当の勇者」になれたんじゃないかと、
実は今でも思っています。
だから正直、愛恋には、クライマックスまでいってからジャーナリストとして魔王と戦うよりも、
もうちょっと手前で、友人として彼女を救う手段を模索して欲しかったです。

愛恋が魔王の誕生を察知してからクライマックスに至るまでには、かなりの時間があったはず。
本当に陽子のことを友人だと思っていたならば、その知力と行動力をもって、
道を誤りつつある友人に向き合ってほしかった。
語ったり殴り合ったり?してあげてほしかった。

友人が道を誤ってしまってから、それを否定し、叩くんじゃなく。
そのひとが誤りつつある過程で、諭し、救ってあげてほしかった。

…まぁ、そうであったならば、07という物語は存在しませんね。笑
ただ私は愛恋という少女にやりきれない気持ちを感じたのです。
彼女に共感し、感動しながらも、
結局この少女は“ジャーナリスト”であり、
いつだって「真実を武器に戦う」ことしかしなかったんだな、と。
そういう子なんだなぁ…と。

別に愛恋が良い子とか悪い子って話じゃなくて(その意味なら、もちろん良い子だと思います)。
多分これは、好きか嫌いかって話。
私はジャーナリストってこういう生き物だよなぁと再認識すると同時に、
私はこういうの好きじゃないなぁ、と痛切に思ったのでした。
もちろん彼らは大切な存在で。かけがえのない人間の夢の一つの在りようで。
きっとこの世の中には必要で。
ただ私、風琳珂には受け入れがたい…微妙に相容れない存在なのです。
きっと私が、“真実”というものにあまり興味がないからでしょう。

私は「真実はいつも一つ」という某小さな名探偵の決め台詞は、間違いだと思っています。
たった一つしかないのは“事実”だと思うのです。
その事実から、それを受け取るものによって、無数の“真実”が生まれて。
それらの真実は全て同じくらい正しく、同じくらい間違っていて、
同じくらい大切なものではないでしょうか。
…南風森愛恋と佐藤陽子の関係性を通じ、改めてこういうことを考えさせられました。

長くなってしまいました。この話題は、お終いにしましょう。

さて、何故私がストーリーの評価を低めにしたのか。
それはこの巻から「謎の“虫”のインフレが始まる」から、
そして「風呂敷が急激に広がる→ムシウタという物語の方向性が見えなくなってくる」からです。

能力のインフレは、バトル物には定番です。
それにしてもですね。ここに来て突然のインフレっぷりが半端ない。
しかもこのゲニウス、単にチートに強いんじゃなく、能力が謎すぎます。
宿主から夢が喰らえない→他人に依存して生きる虫っていうのは、既に千莉の前例も出てましたし、生命として当然のことかな、って納得できるんですよ。
じゃあ何が謎なのか。
一つ目は、“ゲニウス”とは何なのか、です。
虫憑きには有夏月や大助みたいな一匹だけの虫を操るタイプと、アキや緒里のように複数の虫を操るタイプがいます。
ゲニウスも後者の一種と捉えればいいんでしょうか。
しかしそうした虫憑きたちは、同じような見た目、大きさ、能力の虫を同時に複数体操っています。
一方のロキと棺とゲニウスは、見た目も大きさも能力も違います。
同じタイプでくくるのは無理がある気がします。
となるとゲニウスは「一匹の虫」タイプということになります。
仕方ないので私は
 ゲニウス=本体。棺は、ゲニウスが眠っている間だけ使う能力。
 ロキは陽子の力を借りるため、ゲニウスの身体の一部を切り離す?か何かして生まれた。
…ってな感じの推論を立てて自分を納得させてたのですが、違うっぽいんですよね。

二つ目は、棺のこと。
08でも似たようなモチーフの能力を持つ墓守が出てくるので「かぶってますよ。しかも連続した巻で」という突っこみもしたいのですが、それを置いといても謎です。
餌が閉じ込めるのが白っぽいフワフワの卵や繭、とか、
それが隠されている場所が木やアンテナの上の方で、目だたない様にくっつけられてた、
…っていうなら分かるんです。
ははぁ、カマキリモチーフの“虫”なんだな。って。
でも、棺。何故か地中。地中からぞぞーっ!と出てくる。
謎。

つまり何がいいたいかというと、「ゲニウスは“虫”っぽくない」んです。
少なくとも06までに積みあげられてきた“虫”のイメージでは理解し難い。
さらに、今まで出てきた虫たちとは異質な、段違いの強さを持っている。
この傾向は08の萌々、09のザザビィたち、10のカノンと続いていきます。
01~06+bug数巻をかけて長々築き上げられてきた“虫”という価値観が、
ここにきて微妙に揺らぐのです。
そしてこの違和感は一応07中でも解説され、その後も解説が重ねられているものの、
未だ満足に解消されていません。

「風呂敷が広がる」のもそうです。
一例をあげれば、06まで虫との戦いは虫憑きだけのものでした。
それは世間には知られないものだったし、これからもそうであり続けるだろうと、登場人物にも読者にも思われていました。
しかし07で「虫憑きの存在は世界に知られるであろう」という指針が示されます。
虫と虫憑きは一度世界に受け入れられ、万人にとっての現実となるのだと。
これにより「虫と虫憑きの問題は密やかに解決され、世界はそれを知らず、知っていたものも忘れ去り、何事もなかったかのように元に戻る」という、こうした不可思議現実バトルもののありふれた結末を迎える可能性が薄れました。
この流れは08、09と続き、とんでもない虫憑きやαが出てきたりします。

私はこれらを大変不思議に、そして少し残念に思っています。
ちょっと強引ではありますが、喩えるならD.Gray-manですね。
あれも突然のインフレ、物語の方向性の転換がおきます。
後で説明がなされて一応理解はついていくものの、明らかに物語の雰囲気が変わり、完全に消化できない。

これは展開じゃなくて、転換です。
おそらく、読者として想像するに、当初は予定されていなかったもの。

―振り返ってみれば06にもこの兆候はあるんですよね。

…作者が連載初期から描こうとしてきたもの、本当に描きたいものがブレていないか心配です。
百歩譲って、作者自身がそれを変え、
望んで物語を変えていっていらっしゃるならいいのですが。
…岩井先生は大丈夫だと信じています。。

はい。いい加減にします。

戦闘描写はもう安定の域です。
ここでただのモブだった少女が名前もちになり、12で主役を張るとは夢にも思いませんでした。
さすがの琳珂も12の初読時、すぐに誰か分からなかったです。
「○○遮断!」っていう台詞には覚えがあったので、調べ出せましたが。
いやはや。まぁムシウタらしいですね。

人物描写は圧巻です。
愛恋の過去や覚悟、有夏月の葛藤…すべて泣けます。
二人の友情には和みます。

そして、有夏月がめちゃくちゃ恋してます。笑
読んでるこっちが恥ずかしくなるくらいのは久々ですよね。01以来くらい。
しかも今回はほぼ全て有夏月の一人芝居(≒妄想)なので、半端ないです。。。
いや、いいと思う。いいと思います!
すごく想われてて良かったね、千莉。このシアワセものめ。
でもほんと彼はどうするんだろう。
愛恋とは一応友人だけど、どう見ても良い感じだよなぁ。
しかし彼が千莉をすてるとは思えない。
しかし千莉には恐怖の最強兄がいる……。
…何にせよ頑張れ、有夏月。笑

陽子の恋も、あれはあれで純粋だと思います。
個人的には微笑ましく、共感する部分もありました。

ヒロインは良い意味で、既存のムシウタらしくありません。
独自の魅力を放っており、しっかりと一定のファンを掴んでいます。
デザインも可愛いですよね。
表紙も電波な雰囲気があっていいと思います。


最後に、今巻を久々に読み、新たに得た視点について。
今まで私はムシウタを、01~05までで一段落し、06~08に外伝があって、
09~本題に戻る、といった区切りで見てきました。
でも、01~05、06、07~現在、というようにも区切れると気づきました。
鍵は「ヒーロー」と「ヒロイン」です。
ムシウタといえば可愛い魅力的な少女達、と思いがちです。
ヒーロー枠はずっと大助だけでした。
しかし06で鯱人が、07で有夏月が、08でダイスケと大助が、
09で弐兵衛が、10ではカノンが、11では再び大助が、12ではハルキヨが。
全力でヒーローを張ってくれます。
大助さえも…01~05までやbugとは活躍の質が違ってきてます。
詳しくは12のレビューで述べたいと思いますが、
 01~05はヒロインが主軸で、ヒーローがそれを支える。
 06はヒーローとヒロインの両軸。
 07~はヒーローが主軸で、ヒロインがそれを支える。
そんな構図が見えました。
戦闘狂の鯱人の次に、戦うのが嫌いな彼のお話があって。
その次に、戦いは嫌いだけれど、だからこそ戦うという。
ダイスケとダイスケの物語が来る。
この流れがいかに感動的だったか、やっと気づきました。


ああ。いい加減、レビューを終わらなきゃ。

…なんだかんだと言いましたが。
私が一番好きな男子キャラは大助じゃなく、シャチでもなく、
有夏月なんだなぁと改めて思いました。
既にある程度完成されてる大助やシャチと違って、
彼はきっと、これからもっともっとカッコよくなるんだろうし。

ああそうか。
現在のクライマックスで大助が脱落し、シャチと有夏月がタッグを組んでいるのは当然なのか。
二人が戌子ゾンビと利菜ゾンビと戦うわけですね。
そして華麗に勝利し、希望を見せてくれるんですね。

楽しみです。


今度こそおしまいにします。ではまた。
03:50  |  ムシウタレビュー  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★Re: タイトルなし

コメントありがとうございます♪
お返事が遅くなってごめんなさい><

7巻はゲニウスを中心に、色々謎が多かったですね~。

11巻冒頭とは、また細かいところを。笑
昔よりマシになったとはいえ、有夏月はまだまだ残念さが漂ってますね…。
きっとそんなダメンズなとこも彼の魅力なんです。たぶん。笑
今後もっとカッコよくなってくれることに期待しましょう!
風 琳珂 |  2012年09月25日(火) 00:48 | URL 【コメント編集】

レビュー読ませてもらいました(*´∇`*)

俺も似たような事を思ってて7巻に関しては謎と思える部分が多くあった気がします。

あとは有夏月くんは間違いなくダメンズなんでしょうねw
11巻の最初の方おおくらさんのかっこうに対する台詞にわらった有夏月が千莉に

千莉『何がおかしいの、有夏月くん?』

と言われてるあたりに残念さをか醸し出してましたから。
イルカ |  2012年09月19日(水) 01:26 | URL 【コメント編集】

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