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2012.08.21 (Tue)

12週間連続企画!ムシウタレビュー 【06.夢導く旅人】

楽しかろうと、悲しかろうと、辛かろうと、苦しかろうと、
迷っていても、関係ないのだ。
すべては戦うことによって解決できる。
何をすればいいのか分からなければ、戦え。
戦えるかぎり、戦え。
戦えなくても、戦え。
戦いたくば、勝て。
ボクたちはすべてに勝つことができる。
負けても、次に勝つことができるのだ。

rbs6.jpg

お前たちに、ボクらの“可能性”までは計り知れないのだよ。




企画最初の記事(01のレビュー)や最新の記事に載せている【注意事項】に目を通してから、お読みください。


それでは追記にて、【06.夢導く旅人】のレビューを開始します。

【More・・・】

 
書籍データ   ―それは、最高で最悪の個人授業。
 【初版発行日】2006年1月1日 【ページ数】376p
 【主役】獅子堂戌子(“あさぎ”)、塩原鯱人
 【準主役】ジャール・ハリシ、間崎梨音、“浸父”
 【脇役】薬屋大助(“かっこう”)、魅車八重子


評価  総合:★★★★★
  ストーリー:★★★★★ 戦闘描写:★★★★★ 人物描写:★★★★★
  泣ける度:★★★★★ 和む度:★★★★☆  恋してる度:★★★★☆
  ヒロイン:★★★★★ 表紙:★★★☆☆

レビュー

ムシウタレビューシリーズも折り返し地点へやって来ました。
遂に、みんな大好きワンコ先生こと、獅子堂戌子のご登場です。

初対面の方に「好きなムシウタキャラは?」と訊ねると、十人中八人は戌子の名を挙げます。
彼女を嫌いというムシウタファンには逢ったことがありません。
かくいう私も彼女が大好きです。
毅然とした態度、飄々とした立ち居振る舞い、勇猛果敢な戦いぶり。
なのに可愛い。
まさに最強の存在。作中でも多くの教え子に慕われています。

その戌子と同じくらい重要なのが、新ヒーロー・鯱人。
彼女が戦士として育て上げ…それ以上に、人間として互いに教えられ、救われる存在です。
二人のコンビが好きって方も多いでしょう。琳珂もそうです。
また鯱人は、初めて大助以外に“ヒーロー”として描き出された少年でもあります。
後に07の有夏月や08のダイスケも同様の扱いを受けますが、
シリーズ全体で見れば…今なお、ムシウタという物語における男主人公は大助と鯱人だけです。
12巻で大助が脱落した現在から振り返ると、
06は新旧シリーズヒーロー交代の予兆ともいえます。
かつて大助の背中を守っていた戌子が、彼に代りうる可能性を持つ少年を送り出したのです。
そして鯱人は今、彼女が夢みていた通りに、新たな大いなる戦いで主役を張っています。
この構図も魅力的ですね。

私などが改めて言うまでもありませんが。
06は、ムシウタシリーズ最強にして最高の人気を誇るヒロインと、
その才能と技術と心の全てを継いだ最高にカッコいいヒーローの、
最悪の夢と絶望に負けない希望に満ちた物語です。


はじめに時系列を確認しましょう。
冒頭に『二月の風』という記述があります。
プロローグには「つい最近、ボクの友人から、キミのような同化型(※筆者注 おそらく特殊型の誤植)を生む存在を倒したという話を聞いたんだけれど」とあり、
1.00に『先週のヴァレンタイン・デイ』、1.02に『先週、ふゆほたるが脱走した』と書かれています。
また、物語の流れは以下のようになっています。
 一日目:わんことシャチが出逢う・梨音二次オーディション。
 数日後:シャチ基礎訓練・戌子、支部で浸す父と戦う→合格
 さらに数日後:わんこは八重子と電話。梨音は最終オーディション。
           シャチ、アルバムを見たのち適性試験→合格
 さらに数日後:わんことシャチ、夜の浜辺で最強の戦士“かっこう”について語る
 その一日後:梨音、ジャールの死を目撃。シャチ、本来の自分を思い出す。最終試験→不合格
 その数日後:シャチ、他の学校より早めの三学期の終業式。梨音、舞台本番。
         わんこ、大助(西遠市に向かう途中)と電話。最終試験・補習→合格
以上から、06は2月21日前後~3月中旬(04のラストの前日)のお話といえます。
一冊の中で一ヶ月が過ぎるというのは、ムシウタにしては長い方ですね。

ストーリーは…うん。
総評するのもバカらしいくらい、これでもかっっ!と面白いです。
なんでだろう。なんでこんなに何度読んでも胸躍るんだろう。
ひとまず本筋がしっかりしてます。
旅人の戌子がホラント市へやって来て、鯱人と出逢い、彼を育て、
彼を救い、自らを救い、旅を終える。
そこに“浸父”との戦いが絡み、04や05とは別の方向から原虫の謎が分かってきます。
特別安全保全事務局の様子も分かります。

今巻の特徴の一つに、登場人物の少なさと主役級・準主役級の構成があります。
一番上のデータを見れば一目瞭然です。
なんといっても“浸父”が準主役級にいるのは衝撃。
大喰いとは全然違うおぞましさを、ひしひしと感じられます。
それに絡んで、鯱人・戌子と対比される梨音とジャール・ハリシ。
“虫”や虫憑きに一切絡まない一般人の夢のお話というのは、シリーズを通しても珍しいです。
“浸父”の悪魔の囁きは本当に怖い。
翻弄される梨音の心情は、僅かでも夢を持つ全ての現代人の胸を打ちます。
そして同様に翻弄された挙げ句、敗れて“浸父”の良いようにされるハリシの描写。
背筋が凍ります。
敵の…“敵になってしまったもの”のストーリーを知りつつ、
それを打ち砕く戌子・鯱人側の視点に感情移入しながらバトルを読む。
今巻特有の面白さの一つであることは疑いようもありません。
しかし全てを絶望で終わらせず、最期にハリシの人格を出させ、
希望を与えてくれるのが流石岩井先生。
戌子たちの圧倒的な物語の陰に隠れがちですが、
梨音とハリシのお話があってこその06だと思います。

そいえば。
アリア(“先生”)は05やbugで喋りまくっているとすれば、準主役級以上の視点で自らの意志を明示していない原虫は、エルビオレーネだけですね。
いつか彼女?視点の章も来るのかな。楽しみです。

あと今巻は他の巻との繋がり方も特徴的ですね。
05まで積み上げられてきた一本の流れに、サブストーリー的に繋がってます。
戌子と八重子の電話など、ファンがニヤニヤできる展開てんこもりです。
これはbugとも、近年になって刊行されている巻に至っても言えます。
特に最近は、ワンコの旅の成果―教え子たちが続々と活躍してきてて楽しいですね。
たとえば69ページで
「まあ、この前見つけたボクの教え子がそろそろ訓練を終える頃だから、Cの後継者には困らないだろうけど」と戌子が言っています。
この教え子は、12巻で登場した“りんりん”のことでしょう。
鯱人も07、09、11、12と大活躍を続けています。戌子の満足げな顔が見えるようです。

舞台も登場人物もほぼ総入れ替えされていて、構成も独特で、新たな試みも多いのに。
“ムシウタ”の雰囲気はそのままある。
ほんと、06は良い物語だと思います。



戦闘描写は、まず鯱人の成長過程が楽しい。
ワンコの戦闘訓練を具体的に順を追って読めるので、「他の弟子たちもこんな感じで鍛えられたのかなー」と読者に空想させてくれます。
戌子という鍛え上げられた狂戦士vs“浸父”の激しい戦いも見ごたえがあります。
鯱人も頑張るし…人物描写と一体になった(いつもだけど)アツいバトルです。
その人物描写は充実の極み。
これまで私たちが出逢ってきた虫憑きたちとは違う、
「綺麗な夢」ではない夢を持った戌子とシャチ。
夢を持ちつつもけして真っ直ぐ一筋縄ではない梨音とハリシ。
それぞれ異なるかたちなのに、同じように夢へ焦がれつつ絶望を抱えた四人の心がひしひしと伝わってきます。
まぁ05までと同程度…いやそれを上回るページ数で、たった四人を中心に動かしてますからね。
かけている力と量からいって当然かもしれないんですが、
それにしても戌シャチも梨ハリシも最高です。
戌子と鯱人の魅力は特に、ここにあるといえるでしょう。
またクライマックスでの戌子→大助への電話も感動します。
大助の声は全然書かれないのに。
ほんと、泣けちゃう。

…はい。つまり、泣ける度はクライマックスです。笑
この巻は和むとこも多いです。
鯱と梨音はもちろん、シャチと戌子のやりとりがいい。
個人的には89ページの『怪獣カビゴン』の準備風景がお気に入りです。
鯱は怖かったんだろうな。笑
んでも、是非完成したギャグシーンがみたかった。
ほんと、戌子のキャラがよすぎます。

恋してる度も高いですね。
っていうかムシウタで曲がりなりにも恋人らしいことしてるの、
戌シャチと萌々&ダイスケだけなんですよね。
そのなかで今も生きてるのシャチだけなんですよね。
残る公式カップルは大助と詩歌だけで、あの二人も一緒にいられたのは三日間で、
実は手を繋ぐくらいしかしてないという。
……(自分で書いて自分でびっくりした)。
ほんと、06は貴重ですね。
この後の09のシャチの“かっこう”への宣言、11の戌子は俺の嫁宣言もときめきます。
…何故シャチだけこうなんだ。
彼が遊び人かつ肉食系(?)だからなのかな?
大助も有夏月も草食系ぽいもんね…いや戦闘力は強いけど…どうも鈍いしダメンズよね…。
二人とも、恋愛方面ではもーちょっとシャチを見習っても良いんじゃ。遊び人は良くないけども。
…いや、うん。別に良いんです。具体的に何がどうたらばっかりが恋してる度でもないと思うし。
07の有夏月のニヤニヤ感も、03の初季も逢えない大詩のモノローグも凄く恋してるもん。
だけどまぁ、うん。
…つまり何が言いたいかというと、もーちょっと恋愛描写多くてもいいと思うよ岩井先生!
(琳珂は少女漫画育ちなので、主人公達のらぶらぶが好物なんです)

長々とすみませんでした。


ヒロインについては、語ろうと思えば永遠に語れちゃうので…いい加減にします。
戌子は大人気で素敵な女の子でございます。
デザインも超可愛いです。
何と言っても、この犬耳っぽいカッパですよね。
本文中には「カッパ」としか書かれてないのに、そもそもただのカッパなのに、
こんなに可愛くしちゃうとは。
るろお先生流石すぎです。
表紙も彼女の魅力を十二分に引き出しており、
るろお先生お得意の機械類(ベスパ)も堪能でき、
背景の“浸父”の不気味さも相まって良い感じです。

あとはイラストについてですね。
私見ですが、この巻を境に、るろお先生の絵柄が大きく変わっていきます。
02のレビュー時も書きました。今と昔では先生の絵が違う、と。
長いシリーズですから、作者の方々が変化されていくのも当然の流れだと思います。
私が初めてこれに気づいたのは、
189ページの梨音でした。
当時、友達と一緒に本屋へ行き、二人でムシウタを買って。
イラストマニアの友人はすぐに袋をあけ、パラパラと挿絵を眺めはじめました。
本文重視派の私は先にイラストを見るのが嫌いで、その動きを見ない様にしていました。
しかし、「ねえ、これ」と189ページを差し出され。
抵抗できずにそれを見て。
言い様のない違和感に襲われました。
その梨音の顔は、るろお先生の絵に見えませんでした。
むしろ、当時同じザ・スニーカーで連載されていた別の作品の別の絵師さんの絵に見えました。
私がそう言うと、友人も同じ意見でした。
二人で「るろお先生、あの絵師さんに影響うけたのかな」なんて語り合いました。
この推測が事実なのかどうかは分かりません。
もしかしたら全然違って、全く違う方に影響を受けたり、自ら精進されて絵柄を変えられたのかもしれません。
「あぁ、るろお先生の絵は変わっていくんだ」と、
痺れたような気持ちになったことをよく覚えています。

とはいえ私は絵師ではないので、細かいことは分かりません。
明確に感じるのは目(特に女子)とカラーの塗りくらいです。
10巻くらいになると違いはかなり顕著ですね。

今の先生の絵ももちろん好きです。
でも私は、もう一度だけ言っていいなら、02や03当時のるろお先生の絵が大好きでした。
何故か、ずっと同じイラストでムシウタの世界を見てい続けられると思っていました。
物語はただの物語でなく、それを作り上げる現実で確実に時は流れ、
物語の紡ぎ手たちもその流れの中にいるのだと痛感した出来事でした。



最後に。
06は私が自分のホームページを持ってから、初めて刊行されたムシウタ本編です。
…そう、B★Sの前、青空のルチアという拙い小さなサイトのことです。笑
発売情報を知って、わくわくしながらホームページに「祝・○巻刊行!」と書き、
一生懸命戌子を練習して、
記念のTOP絵を描いて、
チャット会を企画しました。
風琳珂として初めて迎えたムシウタ本編でした。
(bug3rd.の時は力不足過ぎて…^^;)
感慨深いです。
その記念すべき一冊が06であったことを嬉しく、懐かしく思います。




長くなってごめんなさい;
本当は、うっかり書いた戌子と鯱人の絵を上げようかと思ってたんですが、
あまりに長いのでやめます。
また機会があれば。

以上でレビューを終わります。ありがとうございました。
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 |  2018年09月01日(土) 22:29 |  【コメント編集】

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